展覧会紹介

© Succession H. Matisse Photo: François Fernandez

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マティスと切り紙絵

制作中のマティス
制作中のマティス 1952年頃 © photo Archives Matisse / D. R. Photo: Lydia Delectorskaya

マティスはその芸術家人生を通して、色彩とデッサンの関係を模索してきました。20世紀初頭に「フォーヴィスム(野獣派)」と呼ばれた時代から、ニースを拠点に制作された光に満ちた作品まで、彼は「色彩の道」と表現される道を歩んできました。一方で、流れるような線で人物を描写するデッサンや版画でも知られます。
晩年に大病を患って以降、新たな表現手法として精力的に取り組んだ切り紙絵を通して、マティスは色彩とデッサンの関係を刷新したのです。マティスは、筆とカンヴァスに代えて、紙とハサミを主な道具とし、芸術家人生の集大成というべき境地に達しました。

切り紙絵の作られ方

1.紙に色を塗る

マティスは、切り紙絵に使う紙にまず、グアッシュと呼ばれる水性絵具で色付けすることをアシスタントに依頼しました。
この絵具は、マティスがパリとニースの画材店で吟味して購入したもので、様々な色がありました。水で薄めたグアッシュを紙に塗った後は、乾くまで重しを載せます。グアッシュをしっかりと濃く塗ったものもあれば、筆跡が残る程度のものもありました。

2.切る

マティスは作品に取り組むとき、アトリエの床に色紙を並べるように頼みました。マティスは特定の一枚を選び、様々なサイズのハサミを使って、形を切りとっていきます。一枚の紙から非常に大きな形が切り取られたものもあれば、小さな形に切り取られた紙を重ねて最終的な形が構成されたものもあります。

3.ピンで留める

マティスは切り取られた紙を配置し固定するために、ピンや画鋲、細い釘などを使って、具体的な図案を作りました。小さなサイズの作品に対しては椅子やベッドに座って台の上で作業しました。作品のサイズが大きくなってくると、スタジオの壁が支持体となります。アシスタントはマティスの指示に従い、切り取られた紙を金槌とピンを使って壁に固定します。この方法により、紙を素早く簡単に取り付け、位置の変更や改変をスムーズに行うことができました。

4.トレースする

新しい作品を作るために壁のスペースが必要になったり、作品を額装したりするとき、スタジオの壁から切り紙絵を取り外す必要がありました。切り取られた色紙の配置が終わると、その位置関係を正確かつ永久に記録するために、トレースが行われました。重なる形がある場合は、それぞれの形の裏に番号が付されました。

5.取り付ける

1950-1951年までは、切り取られた形は部分的に糊を付けて下層の紙に接着され、壁にピンで留められていたときの3次元的な躍動感を保っていました。1952年にはパリの美術用品・修復会社が採用していた裏打ちの技法を使い始めます。切り紙絵の長期保管のため、マティスは擦れやすいグアッシュの表面のためにガラスの装着を望んだのです。こうして、切り紙絵を安全に保管し、額装し、運搬することができるようになりました。